社長の年収はどこで分かる?有価証券報告書で役員報酬を調べる方法
気になる会社の社長が、いくらもらっているのか。
株を買う前や転職先を調べるときに、ふと知りたくなる数字です。
はじめまして、長尾慎吾です。
地方銀行で法人融資を10年担当し、いまは独立系のFPをしながら、個人投資家として小型株の調べ方をブログに書いています。
銀行員時代は、融資先の決算書を開くたびに役員報酬の欄を見ていました。
社長がいくら取っているかで、その会社のお金の回し方がかなり見えてくるからです。
上場企業の場合、その数字は有価証券報告書という公式の書類に載っています。
ただ、載り方にはクセがあって、そのまま「社長の年収」とは読めないことが多いです。
この記事では、どこを見れば役員報酬が分かるのかと、数字を読むときに気をつけたい点を、実際の有価証券報告書を使って説明します。
Contents
社長の年収は有価証券報告書の「役員の報酬等」に載っている
上場企業は、事業年度が終わってから3か月以内に有価証券報告書を提出することが、金融商品取引法で決められています。
3月決算の会社なら6月下旬、12月決算の会社なら3月下旬が目安です。
役員報酬が載っているのは、次の場所です。
- 第一部【企業情報】
- 第4【提出会社の状況】
- 4【コーポレート・ガバナンスの状況等】
- (4)【役員の報酬等】
書く中身は、企業内容等の開示に関する内閣府令の様式で決まっています。
大きく分けると、報酬の決め方(方針)、役員区分ごとの総額と人数、役員ごとの個別の金額の3つです。
役員区分は「社外取締役を除く取締役」「社外取締役」「監査役」などに分かれています。
社長の報酬は、ふつう「社外取締役を除く取締役」の欄に、ほかの取締役の分とまとめて入っています。
名前と金額が出るのは「1億円以上」の人だけ
役員ごとの個別の金額は、連結報酬等の総額が1億円以上の人に限って書けばよい、というルールです。
金融庁が2010年に府令を改正し、2010年3月期の有価証券報告書から始まりました。
東京商工リサーチの2025年度の調査によると、2025年4月期から2026年3月期の決算で1億円以上を開示した上場企業は606社、人数は1,345人でした。
調査対象の上場企業は3,817社です。
つまり、名前つきで報酬額が出ている会社は全体の2割に届きません。
残りの会社では、社長個人の金額は書類のどこにも出てこない、というのが出発点になります。
1億円以上の人の金額も、そのまま「毎年の年収」とは限りません。
同じ調査で最も高かったのはセブン&アイ・ホールディングスの元取締役の134億1,700万円でしたが、そのうち103億6,800万円は、連結子会社の7-Eleven, Inc.を退任する際の退職手当でした。
個別開示の金額には、子会社から受け取った分や、退職時の一度きりの支払いも含まれます。
報酬等の種類別の内訳まで見ておくと、こうした特殊な事情に気づけます。
EDINETで有価証券報告書を探す手順
有価証券報告書は、金融庁のEDINETで誰でも無料で読めます。
登録も要りません。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | EDINETのトップページを開く |
| 2 | 検索欄に会社名か4桁の証券コードを入れる |
| 3 | 書類の種類で「有価証券報告書」を選んで検索する |
| 4 | 一覧から読みたい年度の書類を開き、PDFを表示する |
| 5 | 目次から「役員の報酬等」を探す |
会社名は部分一致で探せるので、正式名称があいまいでも大丈夫です。
提出期間の初期設定は「過去1年」なので、古い年度を見たいときは期間を広げてください。
有価証券報告書の法定の縦覧期間は5年です。
多くの会社は自社サイトのIRページにも同じPDFを載せているので、そちらから探す方法もあります。
役員報酬は、有価証券報告書のほかに、株主総会の招集通知に付いている事業報告にも載っています。
こちらは会社法施行規則で記載事項が決まっていて、取締役や監査役ごとの総額と人数が中心です。
東京証券取引所に提出する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」にも、個別の報酬を開示しているかどうかを書く欄があります。
ただ、金額や内訳がいちばん細かく載っているのは有価証券報告書なので、まずはこちらを見るのが近道です。
和心の有価証券報告書で実際に読んでみる
ここからは、着物まわりの和雑貨や観光地の店舗を手がける株式会社和心(東証グロース、証券コード9271)を例にします。
2026年3月27日に提出された2025年12月期の有価証券報告書の、役員報酬の表がこちらです。
| 役員区分 | 報酬等の総額 | 基本報酬 | 対象となる役員の員数 |
|---|---|---|---|
| 監査等委員でない取締役(社外取締役を除く) | 44,100千円 | 44,100千円 | 3人 |
| 監査等委員である取締役(社外取締役を除く) | ― | ― | ― |
| 社外取締役 | 2,160千円 | 2,160千円 | 3人 |
その下には「報酬の総額が1億円以上であるものが存在しないため、記載しておりません」とあります。
社長個人の金額は、ここでは分かりません。
社外取締役を除く取締役3人の総額を3で割ると、1人あたり約1,470万円です。
ただしこれは平均で、社長がこれより多いのか、3人ともほぼ同じなのかまでは読み取れません。
表の上にある方針の文章も読んでおきたいところです。
和心の場合、取締役の報酬は2020年3月の株主総会で決めた年額1億円が上限で、その範囲内の配分は代表取締役に一任されています。
報酬は固定報酬だけで、業績連動の部分はないとも書かれています。
上限と実際の支給額を見比べると、その会社が役員報酬にどれだけ余白を残しているかが分かります。
同じ有価証券報告書の「従業員の状況」には、社員の平均年間給与も載っています。
和心の場合、2025年12月31日時点の提出会社の従業員48人の平均は4,607千円でした。
取締役の平均約1,470万円と比べると、およそ3.2倍です。
先ほどの東京商工リサーチの調査では、1億円以上の役員と従業員の給与の差は中央値で9.7倍でした。
役員報酬を社員の給与と並べてみると、その会社の報酬の考え方がもう一段見えてきます。
人数には途中で退任した役員も入る
もうひとつ気をつけたいのが、員数の数え方です。
先ほどの府令の様式では、対象となる役員に「最近事業年度の末日までに退任した者を含む」と書かれています。
年度の途中で辞めた取締役も、1人として数えられるということです。
在任が数か月だけの人が入ると、単純に割った1人あたりの金額は実際より低く出ます。
人数そのものも年によって変わります。
和心の2020年12月期の有価証券報告書では、同じ欄が「31,102千円・6人」でした。
5年後の2025年12月期は3人なので、平均の意味合いはかなり違ってきます。
割り算をする前に、表の下の注記や「役員の状況」の顔ぶれまで目を通すのがおすすめです。
年収サイトの推定額を使うときに確かめたいこと
上場企業の社長の経歴や推定年収をまとめたサイトもあります。
たとえば和心の創業者については、森智宏さんの経歴や推定年収をまとめたCEOチェッカーのページで、生年月日や創業からの歩み、大株主の顔ぶれ、業績の数字まで一度に見られます。
18歳でアクセサリーブランドを立ち上げ、2018年に東証マザーズへ上場した経緯を年表で追えるのは便利です。
社長の人となりをざっとつかむ入口としては、私もこうしたページをよく使っています。
そのうえで、推定年収の欄は元になった数字を有価証券報告書で確認しておきたいところです。
このページで使われている「役員報酬総額3,110万円・役員数6名」は、先ほどの2020年12月期の有価証券報告書の数字と一致します。
同じ欄の最新の数字は、2025年12月期の「44,100千円・3人」です。
1人あたりの平均で比べると、約518万円から約1,470万円へと大きく変わっています。
推定額を見たときは、次の点を確かめると読み違いが減ります。
| 確かめること | 見る場所 |
|---|---|
| 何年度の有価証券報告書の数字か | 書類の表紙の事業年度 |
| 人数に社外取締役が入っているか | 役員区分の分け方 |
| 期中に退任した人が入っているか | 表の下の注記 |
| 報酬に株式報酬や退職慰労金が入っているか | 報酬等の種類別の内訳 |
ちなみに、会社法上の役員ではない「執行役員」は、この表の対象に入りません。
「執行役」とは別の立場なので、混同しないようにしてください。
役員報酬だけでは社長の年収は分からない
創業者がそのまま社長を務めている会社では、役員報酬より配当のほうが大きな収入になることがあります。
自社の株を大量に持っているからです。
配当の目安は、有価証券報告書の「大株主の状況」に載っている持株数と、1株あたりの配当額を掛ければ出せます。
和心は2025年12月期まで、会社をつくってから一度も配当を出していませんでした。
それが2026年8月13日の取締役会で、1株6円の中間配当を決めています。
半期報告書によると、2026年6月30日時点で森さん個人が持つ株は1,703千株でした。
掛け算すると約1,000万円です。
税金を引く前のざっくりした数字ですが、配当がゼロだった前年までとは、収入の中身が変わってきます。
一方で、森さんの資産管理会社である株式会社フォレストも1,007千株を持っています。
こちらの配当は会社に入るお金なので、社長個人の収入と同じには扱えません。
役員報酬のほかに、社長の収入になりうるものを並べておきます。
- 自社株の配当
- 子会社の役員としての報酬
- ほかの会社の役員を兼ねている場合の報酬
- 持株を売ったときの売却益
どれも、有価証券報告書の役員報酬の欄だけでは見えません。
上場していない会社の社長の年収は推し量るしかない
上場していない会社は、多くの場合、有価証券報告書を出していません。
社長の報酬を外から知る手段は、ほぼないと考えてください。
相場を知りたいときは、国税庁の民間給与実態統計調査が参考になります。
令和7年分の第6表によると、1年を通じて勤務した役員の平均給与は7,863千円でした。
| 企業規模 | 役員の平均給与 |
|---|---|
| 株式会社 資本金2,000万円未満 | 6,907千円 |
| 資本金2,000万円以上5,000万円未満 | 9,921千円 |
| 資本金5,000万円以上1億円未満 | 12,712千円 |
| 資本金1億円以上10億円未満 | 14,321千円 |
| 資本金10億円以上 | 16,825千円 |
ここでいう役員は、取締役や監査役、理事などをまとめた数字で、社長だけの平均ではありません。
社長の報酬は、この数字より高めに出ると見ておくのが自然です。
銀行員時代に中小企業の決算書を見ていても、役員報酬の額は本当に会社ごとにばらばらでした。
会社にお金を残すために報酬を低く抑える社長もいれば、個人で借入れを返すために多めに取る社長もいます。
統計はあくまで目安で、1社1社の事情までは映しません。
まとめ
上場企業の社長の年収は、有価証券報告書の「役員の報酬等」で調べられます。
ただし個人名で金額が出るのは1億円以上の人だけで、それ以外は役員区分ごとの総額と人数から推し量ることになります。
読むときに押さえておきたいのは次の点です。
- 書類は金融庁のEDINETで無料で読める
- 社長の報酬は「社外取締役を除く取締役」の欄にまとめて入っている
- 人数には期中に退任した役員も含まれることがある
- 推定年収を見たら、何年度の数字かを確かめる
- オーナー社長は、配当まで含めないと実際の収入は見えない
1つの会社の数字を3年分ほど並べてみると、報酬の上がり下がりと業績の関係も見えてきます。
気になる会社があれば、まずはEDINETで最新の有価証券報告書を1冊開いてみてください。
最終更新日 2026年10月6日 by alaala